会長あいさつ

千葉県弁護士会とは

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 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」





 これは私の大好きな日本国憲法の前文の一節です。私は1965年生まれですので、アジア太平洋戦争を直接には知りません。ただ、父が1934年生まれ、母が1938年生まれで、この戦争とその後の悲惨な生活を経験していますし、父方の祖父も母方の祖父もこの戦争で死んでいます(どちらの祖父も遺骨は戦地から戻ってきませんでした)。アジア太平洋戦争で、日本は、310万人ともいわれる自国民を死なせ、2000万人以上ともいわれるアジア諸国民を殺しました。日本軍にも、いわゆる「支配層」にも属してはいなかった、日本国民は、必ずしも自覚的にこの戦争の遂行を選択したわけではないのでしょうが、戦争を止めることができませんでした。日本国民は、自身や親族が殺されたという意味ではこの戦争の被害者ですが、戦争を止められなかった、結果的にであれ戦争を選んだという意味では加害者です。私たちは直接戦争をしたわけではないとしても、この加害者の立場を忘れてはならないと思います。だからこそ、戦後作られた日本国憲法は、徹底した恒久平和主義を宣言しているのだと思います。ところが、日本を戦争に駆り立てた「支配層」が戦前から戦後へと温存され、その支配層が中心となって、再び日本を戦争ができる国にしようとしています。私たちは、かつて戦争を選んだ責任を自覚し、今度こそ戦争を止めなければならないと強く思います。日本国憲法は施行から70年を迎えます。千葉県弁護士会は、全国の弁護士会とも共同して、戦争を止めるため、平和憲法を守るために全力を尽くします。


 お話は変わりますが、私は、大学卒業後、百貨店に就職して2年半ほど紳士服の販売などを経験し、その後、業界紙の記者として4年ほど勤めました。その後、司法試験を受け、1999年に千葉県弁護士会に登録して弁護士の仕事を始めました。そういう経緯もあって、「偉そうな」弁護士が好きではありません。お困りの方々が気軽に相談できる弁護士になりたいと思って、毎日の仕事をしています。そうは言ってもまだまだ弁護士と弁護士会の「敷居」は高いと思います。せっかく千葉県弁護士会の会長になれたのですから、弁護士会の敷居ももっともっと下げていきたいと思っています。

 そのような思いもあり、市民の方々にもっと弁護士や弁護士会のことを知っていただきたいと思っていますので、このことを少しお話しさせていただきます。日本の国の仕組みとして、立法権、行政権、司法権の三権があり、これら三権が分立してお互いに抑制しあって均衡を図ることで、国民の権利が守られるようにしています。たとえば、国民の人権を不当に侵害する法律や行政行為は、裁判手続などの司法作用により正されなければならないということです。弁護士は、裁判官や検察官とともに司法権の一翼を担っています。ですから、弁護士は(裁判官や検察官とは異なり)公務員ではありませんが、弁護士の仕事には公共性や公益性があります。また、弁護士法の第1条は「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と定めています(法律で「使命」が定められている職業は珍しいのではないでしょうか)。


 戦前(アジア太平洋戦争以前)には、弁護士は国に監督されていました。そのため、戦前、弁護士は人権擁護のための役割を十分に果たすことができませんでした。国に逆らって人権を守ろうとしても、それを国が邪魔だと思えば、弁護士を懲戒すること(業務をできなくしたり、弁護士資格を奪ったりすること)ができたからです。そこで、戦後、弁護士法が定められ、基本的人権の擁護を弁護士の使命と定めるとともに、その使命を十分に果たすために弁護士自治という制度が設けられました。弁護士自治とは、弁護士の懲戒権を弁護士会が持ち、弁護士会以外のいかなる(国を含めた)他の機関からも弁護士が懲戒されることはないということです。つまり、弁護士自治は、戦前の反省のもとに作られた、基本的人権擁護のための制度です。弁護士が人権擁護のために心おきなく国家権力と闘えるのは、弁護士自治があってこそです。
 ところが、最近の弁護士激増(弁護士数は、私が弁護士になったときには全国で約17,000人、千葉県で約250人でしたが、現在では全国で約39,000人、千葉県で約780人にまで増えています。)により、弁護士自治が崩壊の危機にさらされています。弁護士は、公務員ではありませんから、収入は自分で稼いで確保するしかありません。また、弁護士自治の前提として、それぞれの弁護士会員が納入する弁護士会費で弁護士会を維持しなくてはなりません。10数年で倍増以上という弁護士激増は、当然ながら弁護士過剰と弁護士間の過当競争をもたらしています。反面、弁護士の仕事は増えていません。たとえば、裁判の数は増えていません。その結果、弁護士会費を払えなくなったり、生活すら成り立たなくなる弁護士が増えているのです。国が進める「司法改革」が、このように弁護士業務と弁護士会の破壊をもたらし、弁護士自治の維持を困難にしています。
 しかしながら、弁護士自治は、基本的人権擁護のための不可欠の制度であり、弁護士の使命を果たすために堅持しなくてはならない制度です。ですから、千葉県弁護士会は、全国の弁護士会と共同して、弁護士自治を守るための運動に力を入れています。たとえば、弁護士激増政策の見直しです。このような状況についても、市民のみなさまにご理解いただければうれしいです。


 平和と人権のため、弁護士と弁護士会は闘い続けます。

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