千葉県弁護士会
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会長声明

安田弁護士に対する度重なる保釈請求却下について会長声明

安田好弘弁護士に対する強制執行妨害(強制執行免脱)被告事件について、東京高等裁判所第1刑事部は、本年6月11日午後、東京地方裁判所第16刑事部が同日午前に出した保釈許可決定を取消し、更に、7月6日にも同裁判所が同月5日に出した保釈許可決定を再び取消して、いずれも弁護人の保釈請求を却下した。安田好弘弁護士は、上記被疑事実によって昨年12月6日に逮捕され、同月25日に起訴されて公判が開始したが、勾留は、既に220日(7ヵ月以上)を超える長期に及ぶため、全国3,300名を超す弁護士から、この間の保釈不許可・長期勾留に対し強い抗議の声があがっている。

ちなみに安田好弘弁護士が起訴されている強制執行妨害罪(刑法第96条の2)の法定刑は「2年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり、法定刑と比較して見ても勾留は不当に長期という外ない。

公判の審理は、検察側の証人調べを行なってきて、相当程度すすんでおり、そのような審理状況を熟知する係属裁判所がなした今回の2度に渡る保釈許可決定は、十分に合理的理由があり、その判断が尊重されるべきものであることは、論を俟たない。然るに東京高等裁判所は検察官の抗告を受け、「罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」として保釈決定を取消し、2度に渡り弁護人の保釈許可請求を却下した。

公判は、今後検察側承認調べを経て弁護側の立証段階に入るものと思われるが、安田弁護士が勾留されたままでは、その準備に支障を来すことも予想され、同弁護士の防御権の行使に多大な不利益の生ずることが懸念される。

保釈率の低下、とりわけ「罪証隠滅のおそれ」の抽象的かつ拡大解釈によって、保釈を認めない裁判所の傾向は、近時顕著であって、特に公訴事実を争う被告人に対して保釈が認められることは極めて稀であり、このような被告人に対しては、懲罰的に保釈の運用がなされているのではないかと思わざるをえない事例さえ決して少なくない。

私たちは、刑事訴訟法の理念に反するこのような勾留・保釈実務の現状を到底容認することは出来ない。

私たちは、裁判所において速やかに安田弁護士に対する保釈が許可され、保釈の運用が、相当かつ適正になされることを強く望むとともに、本件を機会に、刑事裁判が、被告人の基本的人権を保障しつつ事案の真相を解明するものであることを改めて確認し、その実現のため弁護人に与えられた責務を全うすることを決意する。

1999年(平成11年)7月23日

千葉県弁護士会
会長 竹澤 京平