千葉県弁護士会
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会長声明

自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明

政府は12月9日、イラク復興支援特別措置法に基づき、自衛隊と文民をイラクへ派遣するための基本計画を閣議決定した。現在イラクでは、アメリカによる占領支配のもとでの戦闘状態が激化し、米英軍とイラク人の死傷者が増大している。そればかりか、アメリカの同盟国とみなされた国々の軍隊や文民、国連職員の犠牲者が相次ぎ、ついには日本人外交官2名が、イラク人運転手とともに襲われて死亡するという痛ましい事件が起きた。

武力攻撃は憎むべき犯罪であるが、現在のイラクは軍事攻撃の連鎖が続くなど、ゆゆしい事態となっている。このような状況のもとで私たちは、何よりも戦争の反省から生まれた日本国憲法の理念とその具体化を目指す第9条の立場に立って、事態を冷静に見る必要がある。ところが小泉首相は、アメリカとの同盟関係を重視し、「テロに屈するな」として、イラクへの自衛隊の派遣を国際社会における責務であると主張している。

当会はすでに本年3月20日、「アメリカなどによるイラク武力攻撃に抗議し中止を求める会長声明」を出したが、その中で、これが多くの市民の生命と人権侵害を引き起こすこと、憲法の平和主義、国際協調主義の理念と国連憲章に反することを強調した。

今回の自衛隊のイラクへの派遣は、その後成立したイラク特措法に基づくものであるが、現在のイラク全土が戦闘状態であることはアメリカ政府も認めるところであり、同法の要件を満たしていない。だからこそ基本計画では自衛隊が対戦車砲など、これまで以上に強力な武器を携行するのである。この現状では、自衛隊員が武力攻撃の標的となる可能性も否定できない。

今回の自衛隊の派遣は、日本国憲法の平和主義に反するものである。よって私たちは、日本政府が世界に誇る日本国憲法の前文や第9条が表明する平和主義に基づいて、平和的手段で、国連中心の復興支援の先頭に立つことを求めるとともに、今回の自衛隊のイラク派遣に反対するものである。

2003年12月24日

千葉県弁護士会
会 長  松本新太郎